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日常の日記‡hik‡
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時間や場所など関係なく、突然湧き上がる感情のままに行動すると、うまくいく人間といかない人間がいる。タイミングの問題なんだろうか。要領の問題なのだろうか。

どちらにしろ、私はうまくいかない人間だ。
例えば、今ならきっと大丈夫だろうと、恋人に電話をかけるが。


「もしも…」
『―――只今電話に出ることができません―――』

決まって留守番になってしまう。
折り返しの電話を取り損ねてしまうこともしばしば。
そして気づいたときは、相手はすでに寝ていたりする。
恋人に限ったことではなく、友人ともそうだ。
それでも恋人とのすれ違いの方が多く、赤い糸なんてきっと、幻か何かだと思ってしまうほどだった。


「なんでさぁ、こうもなかなか連絡とれないのかな。」
『さぁな~。でも俺、ちゃんと携帯確認してるぞ。』
久々に彼との電話。ここ一週間、毎晩の様に電話をかけた。
もちろん、一週間同じ時間帯に電話をかけても繋がらないと思い、1日30分ずつ時間をずらして電話をした。
繋がった時の彼の第一声は『ストーカーか』と、笑いながら言われてしまった。

「あんたまさか、わざと私の電話に出なかったんじゃないでしょうね?」
冗談混じりにそんなことをいうと、彼は笑いながら『んなワケあるかよ』と言った。
『避けるくらいなら着拒するっての』
「ちょっと、本気ですか。酷いわぁ~。」
内心傷つきながらも、彼との久々の電話。やはり嬉しさの方が勝って、その程度の戯言など、気にもならなかった。
今はただ、満足感と幸福感で満たされていた。
それからまたしばらく、彼と連絡がとれなくなってしまい、寂しさや空虚感が私を支配していった。


「それ、絶対避けられてるって!」
「ん~…こいつの彼氏が、そんなだるそうなことするのかねぇ。」
彼女たちと会うのも久々だ。私にとって数少ない女友達である。
「だってさ、メールの返事だってろくにないんでしょ?ウチらと同じ学生だし、タメだし。もうちょっと時間あるはずだよ~。やっぱ浮気してたりして。」
苺がたっぷり盛り付けられたショートケーキをほうばりながら、まるで修羅場を求めるようなことを言う。
お前、今度同じ事言ってやるからな。
「男がみんな浮気する訳じゃないんだから、頭ごなしに決めつけるんじゃないよ」
こちらは甘い匂いのするアップルティーをすすりながら、チーズケーキをほうばっている。
雰囲気は彼女の方が大人っぽいが、食べている物はどっこいどっこいだ。
「浮気はないと信じたいけど、やっぱり私のタイミングの悪さなのかな」
ちなみに私の前には、フォンダンショコラとミルクティーが並んでいる。所詮似たもの同士ということか。
「最近会ってないんでしょ?空いた時間があるなら、彼女に会いに行けばいいのに、それもないならやっぱり怪しいよ!」
「まぁ確かに、会いに来てもいいもんだろうけど…」
「でしょ~!」
どうして自身の恋バナは、こうももどかしく、面倒なのだろうか。
「だからって浮気だっていう証拠も…」
「そんな風なこと言うから、彼氏取られちゃうんだよ!」
「ちょっと、それ関係ないでしょーが!」
私の話題がどんどんズレて、全く私とは関係のない話になっている。恋バナ、というテーマは換わってはいないが、私がこの場にいる意味が少しなくなった。
恋の悩みというものは、誰かに話して簡単には解決しないのだ。
わかってはいるが、やはり少しでも話して、気持ちを楽にしたい。まぁ、今回は失敗したが。
結局なにも解決しないまま、近況を報告したり、グチったりしただけで解散した。


それからしばらくしても、彼とはあまり連絡がとれない状況。
前にデートしたのはいつだったか。途方もなく前だった気がする。
メールも私から送るのがお決まりだ。向こうからくるのを辛抱強く待っていれば、彼からもメールをくれるだろう。
けれど、今の私には待つことが怖いことになっている。
待って、待って、待ち続けて、彼から連絡が来なかったら。それはとても寂しくて、愛されていないような気になってしまうからだ。
求められないことが怖いから、求めてしまうとは、なんとも滑稽なことだ。
それでは愛されていないのと同じではないか。逆を言えば、愛しているとも言えないのかもしれない。

「…そろそろ、」
そろそろ…。
「そろそろ」

……。
「逢いたいな~…」
どうして逢おうと言ってきてはくれないんだろうか。
くだらない内容のメールしかしないで、どうして『今度の日曜日空いてるからデートしよう』とか言ってくれないんだろうか。
「すごく逢いたい」
いますぐ逢いたい。
そう思うと、体が自然と動いていく。
服を選ぶ。久々に逢うのだから、可愛いと思われたい。
化粧をしよう。彼に『あなたは特別な存在』なんだと教えるために。
私はあなたが大好きだと伝えに行こう。


今くらいの時間なら、大学にいると思っていたのに、彼はここに居ないらしい。
そこに通う共通の友人に聞いたところ、今日の講義はつまらないから帰ったそうだ。
それなら家に居るだろうと、今度は彼のアパートを訪ねた。
しかし、そこにも彼は居なかった。
どこに居るのかも検討がつかないので、彼の携帯に電話をしてみた。

通話待ちの曲がかかる。
繋がるまでの時間が長く感じる。短い時間の中で、色んな事を考えるからだろうか。

ガチャ、と音がして、繋がったと思った。

「もしも…!」
『―――只今電話に出ることができません―――』

またしても留守番電話。
どうして私は、いつもタイミング悪く、留守番の時に電話をかけてしまうんだろうか。
どうしてうまく、私の世界は回ってくれないんだろうか。
どうして、なんで。
逢いたかった。

私はそういう星のもとに生まれたのだろうか。
その日私は、家で泣いた。
泣いて泣いて、泣き疲れて、私はそのまま朝まで眠った。夢は見なかった。




ここのところ、友達と遊びほうけている。
遊びたいから遊んでいるわけだが、それだけで遊んでいるわけじゃないことは、私自身、気付いていた。

「そういえばさぁ、彼とはどうなったの?」
苺をほうばっていた友人が聞いてきた。
「あれからだいぶ経つじゃん。どうなったの?」
「逢ってない」
「別れたってこと?」
アップルティーの友人もまじってきた。
「別れてないけど、逢ってない。」
思い出したくないという気持ちが、急速に胸を満たしていく。
「逢ってないって…自然消滅?」
それさえもよくわからない。
メールを送る気にならなくて、私からはメールを送らなくなった。
たまに彼からメールが来るから、別れてはいないと思う。
「でもこないだ、あんたに会いに行ったら、どこにもいなくて参ったとか、ボヤキのメールきたよ」
「…え?」
そんな話は初耳だ。
「私、それ知らないんだけど」
「それ本人に言ったのって聞いたら、格好悪いから言ってないって。あんたが知るわけないわよ」
なんだそれは、格好悪いからとか、そんな理由で言わなかったのか。
嬉しい気持ちもあるのに、それよりも怒りが増す。
なんで言わない、言ってくれたら、こんなモンモンとした気持ちを押し殺さなくて良かったのに。
「…逢いに行ってくれば?」
苺の友人は、相変わらず甘い物を食べながら言った。
「そうだよ、今から逢いにいきなよ。」
アップルティーの友人は、またもアップルティーを飲みながら言った。
「でも…」
「ウチらが言ったんだから、逢えるよ。」
「そうそう、あんたが思い立ったんじゃなくて、アタシらが思いたって言ってるんだから、逢えるって。」
私の心配はお見通しのようで、逢いに行けと言ってくれる。
ごちゃごちゃ考えても仕方ないのかもしれない。
2人が逢いに行けと言うなら、今日こそ逢えるかもしれない。
逢えなければ、2人のせいにしてしまおう。
「…わかった。逢ってくる。」
「いってら~。」
「今日こそ逢ってこいよ~。」
2人は手を振りながら言った。
私も今日こそ、逢いたいものだ。


まずは自宅を確認。ノックをしても、インターフォンを押しても返事はない。
家には帰っていないようだ。
次はバイト先、コンビニの中を覗くが見当たらない。
しばらく本を読むフリをしながら、辺りをうかがったが、見当たらないのでここには居ないのだろう。
最後は大学。
この時間帯に、授業をとってはいなかったと思うが念のため。
いつ出てくるかもわからないので、日がくれるまで待った。
それでも彼には会えなかった。


もう本当に、2人のせいにしてしまおうと、胸の中で決意して家に帰ると、玄関前に大きな黒い塊があった。
暗くてよく見えないが人間だ。
どうしよう、不審者かもしれない。
恐る恐る近づいて声をかけた。
「あっ…あの、何かご用ですか?」
黒い塊が動いた、顔をあげただけのようだが、やはり暗くてよく見えない。私はやや鳥目なのだ。
どうしよう、襲われたら逃げ切るなんて無理に決まっている。
逃げるための案を必死に考えていたら、急に腕を掴まれた。
これでは逃げるのは無理だ。考えた案が無駄になってしまった。
「…お前。」
不審者にいきなりお前呼ばわりされてしまった。
「…お前、どこいたんだよ。」
どこいたんだよと言われましても。
パニックに陥りかけていたから、気づくのが遅くなったが、この声、どこかで聞いた記憶が…。
「電話しても繋がらないし、メールの返事も全然ないし、どこ行ってたんだよ。」
間違いないと、確信するまでに時間がかかるほど、私は彼に逢っていなかった。
「そ、それは…」
声が震えてしまう。ずっと逢いたかった気持ちと、寂しさと、色んな気持ちが一気に溢れて、涙が出そうで。
「まぁいいや、今からデートしようか。」
あぁ、ダメだ。
ずっと我慢してたのに、君の声を聞いたら、涙が。
「ばかぁ!なんでどこにも居なかったのよ!ずっと待ってたのに!」
「ぅえ?んな、俺もずっと…」
「家からバイト先、学校にも行って待ったのに…なんでいないの!」
涙と一緒に、鬱憤も溢れた。
止めようにも止まらない。
どちらもどんどん溢れて、自分ではどうにもならない。
子供みたいに、泣きわめいている。
「すごく逢いたかった、すごく逢いたかったのに…なんで。」
「…ごめんな、俺も逢いたかった」
そう言いながら、ギュッと抱き締めてくる彼の腕の温もりに、私は安心した。
泣いて喚いて安心したら、すごく幸せな気持ちが、胸を満たしてくれた。
大好きな彼が、こんなに近くに居てくれる。
逢えなくて寂しかった。
逢ったらそんな気持ちがどこかに消え飛ぶくらいに、すごく幸せな気持ちになれた。
逢えて嬉しい。
「これからどこいく?」
「え?」
「デートしようって」
「じゃあ、歩きながら考えよう。」
今、君の隣に居ることの幸せを、心から実感したい。
「えへへ、ありがとう。」
「何が、ハズいからやめてくれ。」

あなたに逢うのを、待った甲斐がありました。
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